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    今度はかるく甘えた、羽毛でくすぐるやうな調子があつた。房一はざぶりと水を顔にぶつかけただけで立上つた。

    「なに、訴訟?」

    「ほゝう!」

    盛子は上から見、下から見しながら、

    それは盛子だつた。きりつとした割烹着の姿は彼女の伸びやかな身体の特長をよく現はしていた。

    が、それは徳次であつた。

    小谷は仰山ぎやうさんな表情になつた。

    何となく視線が自分に向けられるのを感じながら、房一は案外に落ちついていた。予期した通りだつた。房一の腹の中はきまつていた。

    「どうしなさつた」

    すると、道平の半ばひきつゝた表情の中には、又あの悦ばしさが、かうして歩いて来たことを人に見られるといふ満足が、ゆつくりと、何だか紙のずれるやうな工合に上つて行つた。

    「それとも、あれかね。やつぱり日露戦争のときみたいに、船で吉賀の先の浜へ上つてそれからやつて来るんかね」

    黒光りのする戸棚の蔭からびつくりしたやうな義母の円つこい眼がのぞくと、

    むかしからおれとこの人とは仲よしだつた――それは押しかくすことのできない悦ばしさだつた。

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